永く乗ろうと大切にしていたクルマが、一方的に追突されて大破したとします。被害者としては元どおりにしてほしいと修理を要求しますが、破損の程度によっては、クルマの時価額より修理代のほうが上回る場合があります。
たとえば新車価格が200万円だったクルマに5年間乗っていて、修理代に150万円以上かかるとすると、ほぼクルマの時価額を上回ってしまいます。このような時は、クルマの修理代ではなく、クルマの時価額が損害の賠償額となります(東京高裁・昭和57年6月17日判決)。一般に販売されている国産車や外国車の場合は再調達が可能ですから、いくら被害者が修理代を請求しても認められません。
逆に、新車価格500万円のクルマで、半年で事故にあったという場合、修理代が150万円であれば、買い替えたいので全損扱いにしてほしいと要求(クルマの時価額を請求)しても、修理代が賠償額となります。また、限定生産モデルなどで、そのベースとなった車両に対して新車価格が大幅に高くなっている場合も同様です。心情的には理解できるところですが、賠償額が増加する可能性は極めて低いと考えたほうが妥当です。
イラスト:車両残存価格
2013年03月現在